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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)6131号 判決 1998年6月18日

大阪府寝屋川市石津東町三一番一号

原告

株式会社横井製作所

右代表者代表取締役

横井伸

右訴訟代理人弁護士

谷口由記

右補佐人弁理士

杉本丈夫

滋賀県東浅井郡湖北町大字小倉二八〇番地

被告

株式会社立売堀製作所

右代表者代表取締役

竹村俊明

右訴訟代理人弁護士

竹内靖雄

右補佐人弁理士

山本孝

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は、原告に対し、金二五〇〇万円及びこれに対する平成六年六月二六日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  仮執行の宣言

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告は、平成七年一一月一七日の経過により存続期間が終了するまで、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有していた(争いがない)。

考案の名称 消火栓装置

登録番号 実用新案登録第一八〇〇六三〇号

出願日 昭和五五年一一月一七日(実願昭五五-一六五一六二号)

出願公告日 平成元年三月一六日(実公平一-九五八九号)

登録日 平成元年一二月二五日

実用新案登録請求の範囲

「格納箱の一側部側に配した支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。」〔別添実用新案公報(甲二。以下「本件公報」という)参照〕

2  本件考案の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という)の記載に照らせば、本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載は、次の構成要件に分説するのが相当と認められる。

A 格納箱の一側部側に配した支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、

B 中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、

C このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、

D リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、

E 且つ、前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。

被告は、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、本件考案の必須の構成要素となる技術的要素に符号が記載されていないが、実用新案登録請求の範囲でいう「支持部材」は、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄における「支持軸7及び第1枠体8からなる支持部材」、「格納箱の一側部側に配した支持部材7、8」、「支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されている」等の記載から、「支持軸7及び第1枠体8からなる支持部材」を指し、また、実用新案登録請求の範囲でいう「リール支持部材」は、同様に、「リール支持部材(第2枠体がこれに該当する。)9」、「リール支持部材9」等の記載から、「第2枠体9」を指すことは明らかであるから、本件考案の構成要件は、

A 格納箱1の一側部側に配した支持部材7、8(支持軸7及び第1枠体8)によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材9(第2枠体9)に、

B 中心水平軸が格納時に格納箱1の略中央に位置するリール2を回転可能に支持し、

C このリール2の中心部に配設した導水管11の流入部19と消火栓4の吐出部20とをフレキシブルな導水ホース21で連通する一方、

D リール2の消火ホース捲付部14に向け開口する前記導水管11の吐出部22に消火ホース5の基端部23を接続し、

E 且つ、前記消火ホース5を保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。

というように分説するのが相当であると主張する。

しかしながら、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄における被告指摘の右各記載は、「以下本考案を図面に示す実施例に基き具体的に説明する」(本件公報2欄20行~21行)ための記載中のものであり、符号は本件考案を実施例に基づいて具体的に説明する便宜のために付されたものであることが明らかであるから、被告の主張は採用できない。

3  本件考案の目的及び作用効果について、本件明細書には次のとおり記載されている。

(一) 目的

「従来一般の装置は上記の如く構成されるので、消火ホースをホース架け又はリールより完全に取外し放水態勢を整えた上でないと、消火栓のバルブを開くことができなかった。もし消火ホースをホース架けに掛吊した状態やリールに捲付けた状態でバルブを開くと、ホース内の水路が扁平となり塞がれているため、放水が不可能である上に水圧により装置の破損事故を招くという問題があった。

従って、従来一般の装置によれば、消火ホースを操作する者と、消火栓のバルブを開く者の少くとも2人の人間が消火活動に必要であり、火災発見者1人による迅速な初期消火活動が困難であるという欠点があった。又従来一般の装置によれば、消火ホースをホース架けやリールから完全に取外した状態でなければ放水できないため、放水までのタイムラグが生じると共に、約30mある消火ホースが消火栓格納箱周辺に放置されることになり、消火活動の支障となるという欠点があった。

本考案は、上記従来例の諸欠点のすべてを是正すると共にコンパクトにリールを格納でき構造も簡単な消火栓装置を提供することを目的とする。」(本件公報1欄24行~2欄19行)

(二)作用効果

「<1> 保形性を具備する消火ホース5を使用し、かつリール2の中心部に配設した導水管11の吐出部22に、消火ホース5の基端部23を接続しているので、消火ホース5を2つ折状に折畳む必要はなく、又リール2に捲き付けた状態においても消火ホース5の内部に形成される水路は断面略円形で常に開いている。従って、火災発見者は消火栓4のバルブを開いた後、消火ホース5をリール2より繰り出しつつ、ノズル30を所望の位置まで持ち運び、放水することができ、単独で迅速な初期消火活動をなすことができる。勿論、バルブを開いた直後より放水が開始され、必要としない場所にまで放水する結果となるが、このような短所は、上記長所に比較すれば微細なものである。

<2> 消火ホース5はリール2に捲付けられているが、その捲付けの長さ如何にかかわらず、常に水路は開いている。従って消火活動に当たっては、必要な長さだけの消火ホース5をリール2より繰出せばよく、極めて迅速に所望の箇所に放水することができる。又格納箱1の周辺に余分な消火ホース5が放置されないので、消火活動をスムーズになすことができる。

<3> 格納箱1の一側部側に配した支持部材7、8によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材9に、中心水平軸が格納時に格納箱1の略中央に位置するリール2を回転可能に支持しているので、格納箱1の内部空間を有効に利用してリール2を格納でき、又リール2を前方に水平回動させて使用状態とするときも、前記支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されているので、奥行きを小とした格納箱1であっても、これとリール2との干渉が防がれる結果、コンパクトにリール2を格納できる消火栓装置を提供できる。

<4> <3>で述べた長所を有するにもかかわらず、構造を簡単なものとすることができる。すなわち、前記リール2の中心部に配設した導水管11の流入部19と消火栓4の吐出部20とをフレキシブルな導水ホース21で連通しているので、リール2の首振りが自在となるにもかかわらず、シール等の必要のない簡単な構造のものとすることができる。」(本件公報4欄33行~6欄11行)。

4  被告は、平成三年七月一日から平成五年三月一二日までの間、別紙第一物件目録添付の第1ないし第14図に示す消火栓装置(以下、イ号物件ないしト号物件を「被告製品」と総称する)を製造、販売した(争いがない)。

被告製品の構成の表現の仕方について、原告は別紙第一物件目録記載のとおり主張するのに対して、被告は別紙第二物件目録記載のとおり主張し、構成a及びbの説明の仕方に相違があり、これに伴い図面における符号の付し方に若干の相違があるが(この相違点については後記第五の一において認定判断する)、その余の点は、構成cないしfの説明を含め、争いがない。

二  原告の請求

原告は、被告製品はいずれも本件考案の技術的範囲に属するから、被告はその製造販売により本件実用新案権を侵害したものであると主張して、民法七〇九条、実用新案法二九条二項に基づき実施料相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成六年六月二六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

第三  争点

一  被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するか。

1  本件考案における「首振り」は、二段のものに限られるか、一段のものを含むか。

2  本件考案における「略中央」とは、格納箱の開口部の略中央を意味するのか、奥行幅方向の略中央を意味するのか。

3  本件考案は、出願前に頒布された刊行物に記載された考案であるか。

二  被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合に、賠償すべき損害の額。

第四  争点に関する当事者の主張

一  争点一(被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するか)について

【原告の主張】

1(一) 被告製品の構成を、本件考案の構成要件に対応させて分説すると、次のとおりとなる(別紙第一物件目録)。

a 格納箱1の内部の右側板又は左側板に支持部材3が取り付けられており、この支持部材3aにリール支持部材3bの基端部が、水平方向に首振りが可能なように枢支されている。

b 前記リール支持部材3bの先端には、リール2が回転可能に支持されており、かつ、リール2を格納箱1内へ収納した状態では、前記リール2の中心水平軸は格納箱1のほぼ中央に位置している。

c 前記リール2の消火ホース捲付け部2aには、消火ホースが捲付け収納され、リール2の中心部には導水管5が設けられており、当該導水管5の流入側5aは、フレキシブルな導水ホース6によって格納箱1内に設けた消火栓7の吐出部7aへ接続されている。

d 更に、前記導水管5の吐出側5bは、リール2の消火ホース捲付部2aへ向けて開口されており、この吐出側5bへ、リール2に捲付け収納した消火ホース4の基端部4aが接続されている。

e 消火ホース4は保形性を備えたホースである。

f 前記格納箱1には、第1図ないし第4図に示す露出型と、第5図ないし第9図に示す埋込型のものがあり、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に使用する型式が選定される。

また、格納箱1には、第4図、第8図及び第9図等のように、他の物品(例えば消火器等)を格納するための収納空間8を別に設けた型式のものがあり、必要に応じて適宜に選定される。

更に、格納箱1には、扉が左付けのものと右付けのものがあり、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に選定される。

前記リール支持部材3bは、前述の如く格納箱1の内部の左側板又は右側板に固定した支持部材3aへ溶接又はボルト・ナット16のいずれかによって取り付けられており、正面視において左側板へ取り付けたものを左開き型と呼称し、右側板へ取り付けたものを右開き型と呼称している。

なお、右開き型にするか左開き型にするかは、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に選定される。

g 前記導水管5は、入口側導水管5cの末端部内方へ吐出側導水管5dの先端部を差し込み、両者を回転可能にかつパッキン15を介設して水密状に連結したものである。

また、前記吐出側導水管5dの中間部には、ホースリール2の側板2bがボルト13により固定されている。

更に、前記入口側導水管5cの先端部側には、リール支持部材3bがボルト14により固定されている。

h すなわち、リール2は、リール支持部材3bの先端へ導水管5を介して回転可能に支持されており、リール2が回転することにより、導水管5の入口側導水管5c内へ挿入した吐出部側導水管5dが回転することになる。

また、リール2の「中心水平軸」は、第11図に示した前記導水管5の長手方向の中心軸線φと一致しており、第1図ないし第9図における図番5の引出し線の先端位置が、前記「中心水平軸」に相当する位置である。

更に、導水管5を形成する吐出側導水管5dの先端部は、第1図及び第10図等からも明らかなように、ホースリール2のホース捲付部2aへ向けて開口されている。

(二) 被告製品の右構成a、b、c、d、eは、それぞれ本件考案の構成要件A、B、C、D、Eを充足し、構成fは任意に選択できる設計事項ないし単なる設計変更であるから、被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するものである。

2(一) 本件考案の構成要件Aにいう「首振り」は、被告の主張するように二段のものに限られるわけではなく、一段のものも当然に含むものである。

(1) 本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄に「支持軸7を中心とする首振りと、第1枠体8の先端側部分を中心とする首振りの2段の首振りが可能なように構成されているが、本考案はこれに限定されず前記首振りが一段の場合をも含む。」(本件公報4欄8行~12行)と記載されているように、本件考案は、一段の首振りのものも技術的範囲に含むものである。

(2) 被告は、原告が再度の拒絶理由通知(乙七の1)に対して、補正により、「リールを首振り可能に支持する支持装置」は第1枠体8及び第2枠体9によつて二段首振りの構成であることを具体的に明らかにした(乙七の2)結果、出願公告の決定がなされ(乙八の1)、実用新案登録を受けるに至ったという経緯によれば、リール支持装置は、水平方向に二段の首振りが可能となるように枢支されている構成であることが明らかである旨主張する。

しかしながら、右の補正後の本件明細書(乙七の2)の「実用新案登録請求の範囲」の欄には、「格納箱の一側部側に配した支持部材によつて水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、」と記載されているのであって、「支持装置を第1枠体8と第2枠体9によって二段首振りの構成にする。」というようなことは一切記載されていない。逆に、原告は、「実用新案登録請求の範囲」を右のように補正するとともに、「考案の詳細な説明」の欄も補正して、「上記実施例においては、リール支持部材(第2枠体がこれに該当する。)9が、支持軸7及び第1枠体8からなる支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されている。そして、支持軸7を中心とする首振りと、第1枠体8の先端側部分を中心とする首振りの2段の首振りが可能なように構成されているが、本考案はこれに限定されず前記首振りが一段の場合をも含む。」(本件公報4欄5行~12行)という記載を加入し、リールを回転可能に支持する支持装置は、二段首振りの構成のものだけではなく、一段首振りの構成のものも含むことを明確にしたのである。

(3) 本件考案は、右のように一段首振りの構成のものも含むから、被告製品は、本件考案と同じ作用効果を奏するということができる。

二段首振りの構成のものであっても、被告主張のようにまず第2枠体9が回動し、次いで第1枠体8が回動するとは限らず、通常は第1枠体8が先に回動してリール2が格納箱1の外部へ引き出され、次いで消火ホース5の引き延ばし時に第2枠体9が若干首振りをすることになるから、被告が主張するように円滑な水平方向への回動ができないというようなことは起こらない。

(二) 本件考案の構成要件Bにいう「格納箱の略中央」とは、格納箱の開口部の略中央を意味するものであり、被告主張のように格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央という意味ではない。

(1) 被告は、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄の「「略中央」という意味は、リール2を奥行きが小のコンパクトな格納箱1内に効率良く格納しうる観点から解釈されねばならない。」(本件公報4欄17行~20行)との記載を根拠に、「略中央」とは格納箱の奥行に対してリールが格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央に位置するという意味であると主張する。

しかし、本件明細書の右記載の直前には、「又リール2の中心水平軸が第1図に示すようにリール2の格納時に格納箱1の略中央に位置することが必要であるが、」(本件公報4欄15行~17行)と記載されていて、格納箱1内における中心水平軸の位置は第1図に基づいて説明されており、第1図は格納箱1の正面図を表すものであるから、中心水平軸の位置は正面図を基準にして判断されるべきものである。本件明細書の右記載(本件公報4欄15行~20行)は、中心水平軸の位置が第1図の実施例どおりに格納箱1の中央になければならないと厳格に解釈されるのを防ぐため、補正によって加入することにより、「略中央」が寸法的に余裕を持ったものであることを明確にしたものである。

(2) 本件考案は、リールを格納箱の開口部の略中央に位置させることにより、格納箱の縦寸法及び横寸法をより小さくすることができ、しかも、「支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されているので、奥行きを小とした格納箱1であっても、これとリール2との干渉が防がれる結果、コンパクトにリール2を格納できる」(本件公報5欄19行~6欄3行)という作用効果を奏することができるのであり、被告製品も同じ作用効果を奏するのである。

3 被告は、仮に本件考案の構成要件Aにいう「首振り」が一段のものを含むとしても、一段首振りの消火栓装置は、本件考案の実用新案登録出願前に外国(ドイツ国)において頒布された刊行物に記載されて公知の技術となっていたから、本件考案の技術的範囲は本件明細書記載の具体的実施例に限定される旨主張し、ドイツ国のTOTAL・FOERSTNER社刊行の消防設備に関するカタログ(乙一の1。以下「本件カタログ」という。末尾にその六一、六五、六六頁を添付する。なお、書込みは被告がしたもの)及び価格表(乙一の2。以下「本件価格表」という)を援用するが、かかる被告の主張は以下のとおり失当である。

(一) まず、被告は、昭和五五年八月頃、当時日本国内にあった三ないし四社のカタログ販売会社のうちの一社から本件カタログを購入し、所持していたと主張するが、入手先は特定できないとするのであって、本件カタログの存在自体が疑わしい。購入時点が昭和五五年八月頃と具体的に特定できるのであれば、入手先も当然分かるはずであり、それが特定できないというのであるから、購入時点も分かるはずがない。

原告が被告に対して本件訴訟の提起前に平成五年一月二二日付内容証明郵便で警告書(甲三)を送付したのに対して被告が送付してきた同年三月一一日付回答書(甲四)では、調査検討に時間を要したこと、被告製品の製造販売を中止することは記載されていたものの、本件カタログの存在や公知技術のことは全く触れられていなかった。被告が、もし被告主張のとおり昭和五五年当時に本件カタログを購入し、所持していたのであれば、右のような回答書の内容にはならなかったはずである。

被告は、無用の争いを避けるため本件カタログの存在、公知技術を示すことなく、被告製品の製造販売を中止する旨の回答書を送付するよう弁理士に依頼したとか、本件考案が公知技術であるか否かの問題と、回答書に公知技術である旨記載されているか否かの問題とは全く別の問題であると主張するが、原告の右警告書は、被告製品の製造販売を中止すれば過去の侵害に基づく損害賠償を不問に付するというのではなく、現在までの製造台数、販売台数、販売先、販売価格、売上総額の回答までも求めているのであるから、回答書の中で本件カタログの存在を示し、本件訴訟におけると同じ主張をしていて当然である。にもかかわらず、被告は、回答書では右のとおり本件カタログの存在や公知技術について全く触れておらず、原告が平成六年六月二三日に提起した本件訴訟においても、答弁書及び準備書面(一)ないし(三)では本件カタログについて全く主張していなかったところ、平成七年七月一〇日付の準備書面(四)で初めて本件カタログについての主張を始めた。

結局、TOTAL・FOERSTNER社が本件カタログを当時刊行、頒布したことを証明する書面は存在しないのである。

(二) 次に、本件カタログ及び本件価格表には、「一九八〇年出版」又は「一九八〇年六月一日から有効」との表示があるだけで、その発行年月日及び頒布年月日について一切記載がないので、本件考案の出願日である「九八〇年(昭和五五年)一一月一七日以前に頒布されたものであるか否か不明である。本件カタログの表紙には被告主張のように「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」、(INTERSCHUTZ '80の保証手数料一マルク)と印刷されているが、商品カタログは、通常、予め設定した頒布日よりも相当前に印刷され、その後、カタログ記載の商品が揃ってその出荷が可能になった時点で頒布されるので、万が一、予め設定した頒布日までに商品の品揃えができなかった場合には、頒布を遅らせることもあるのであるから、右のように印刷されているからといって、本件カタログがINTERSCHUTZ '80において頒布されたと断定することはできない。

また、被告は、本件価格表は本件カタログと一体をなすものであると主張するが、本件価格表の表紙の左下に印刷されているカタログの表紙の縮小サイズのものは、本件カタログの表紙の右下に印刷されている「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」の部分が欠けており、本件カタログの表紙を縮小サイズにして印刷したものでないことが明らかであるから、本件価格表が本件カタログと一体をなしていたものとは到底いえない。

(三) 仮に、本件カタログが本件考案の出願前に刊行、頒布されたものであるとしても、本件カタログには本件考案の構成要件A、Bが開示されているだけであって、構成要件C、D及びEは全く開示されていない。

(1) 被告は、その提出する訳文(乙九)によれば、本件カタログ六一頁記載の「mit faltbarem Druckschlauch」が、本件考案の構成要件Cにいう「折畳み可能なフレキシブルな導水ホース」に当たる旨主張するようであるが、この語は「折り畳み可能な圧力ホース(又は導水ホース)」という意味であり、「フレキシブルな導水ホース」と解釈できる語ではないから、構成要件Cは開示されていない。

また、被告は同頁記載の「mit formfestem Wasserschlauch」が、本件考案の構成要件Eにいう「保形性を具備するホース」に当たる旨主張するが、この語は「固い、丈夫なホース」あるいは「固定されたホース」という意味であり、「保形性を具備するホース」と解釈することはできないから、構成要件Eは開示されていない。

(2) 被告は、本件カタログ六五頁記載の「Innenteile: Wasserfuhrend, aus Messing」は、リールの「内部」が「水を導き、真鍮製」であることを説明していると主張するが、リール(Schauchhaspel)と内部(Inneteile)は格納箱を説明するものとしていわば同格に表示されていること及びリールは真鍮製ではなく薄鋼板製であることから、右記載は、リールの内部についての説明ではなく、格納箱(Einbauschrank)の構造として内部を説明したものであることが明らかであり、同頁掲載の写真によっても、導水管の吐出部に消火ホースの基端部が接続されているかどうか、その接続部分が全く不明であるから、本件カタログには、「リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続」するという本件考案の構成要件Dが開示されているとはいえない。

更に、本件カタログ六一頁では、「C/Bホースのための接続バルブ」は「認可申請中」と表示されており、接続バルブの写真が掲載されていないから、少なくとも製造販売はされていなかったものと思われる。また、同七〇頁の「壁の消火栓の付属品」のうち、「Schnelleinsatzhaspel」(素早く使えるリール)以下の写真が掲載されていない。

(四) 仮に、本件カタログが本件考案の出願前に刊行、頒布されており、しかも、これに被告主張の一段首振りの消火栓装置が記載されているとしても、前記2(一)のとおり、本件考案は水平方向への首振りが一段の場合も二段の場合も含むものであるから、本件カタログの刊行、頒布によっても、本件考案の構成要件のすべてを充足する消火栓装置が公知であったとはいえない。考案がその出願前に全部公知であるというのは、考案の構成要件のすべてを充足する公知技術が存在するということであるから、考案の構成要件の一部が公知技術と同一であっても、当該考案の技術的範囲の解釈に影響しない。

【被告の主張】

1 被告製品の構成は、構成a及びbについて、次のとおり改める(別紙第二物件目録)のが相当である外は、前記【原告の主張】1(一)記載のとおりである。

格納箱1の内部の右側板又は左側板の格納箱1の開口寄りにリール支持部材3bの取付け用固定部材30aが固着され、

右取付け用固定部材30aに正面部30Aと側面部30Bとを備えた中央横断面L字状の連結片30がその正面部30Aを格納箱1の開口側に位置させて連結されているとともに、先端部背面にリール2を回転自在に片持ち支持してなるリール支持部材3bの基部3・と、前記連結片30の正面部30Aとが、横断面L字状の一対の蝶番片60・60と軸3cとからなる蝶番70の前記蝶番片60・60とそれぞれ連結され、

右蝶番70の軸3cをリール2の中心φから該リール2の半径Rに略等しい位置における格納箱1の開口部近くに配設して、リール2を格納箱1の開口部から水平方向に回動可能に構成し、

2 被告製品は、次のとおり、本件考案の構成要件A及びBを具備しないから、本件考案の技術的範囲に属しない。

(一) 本件考案の構成要件Aにいう「首振り」は、二段のものに限られ、一段のものを含まないところ、被告製品は、「首振り」が一段のものであるから、構成要件Aを具備しない。

(1) 本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄において、首振りが一段の場合については、僅かに「首振りが一段の場合をも含む。」(本件公報4欄12行)と記載されているにすぎず、他に何らの具体的な記載はなく、実用新案登録請求の範囲にいうリール支持部材について、「リール支持装置3は、格納箱1の内周側壁に固定した支持軸7、この支持軸7に水平方向の首振りが可能となるように枢支される略コ字状の第1枠体8、この第1枠体8の先端部で水平方向の首振りが可能となるように枢支される矩形状の第2枠体9とから成る。」(本件公報2欄24行~3欄2行)と明記されているから、構成要件Aにいう「リール支持部材」は、第1枠体8及び第2枠体9によって二段首振りの構成であることが明らかである。

また、本件考案は、もともと保形性を具備する消火ホースで構成した消火栓装置として出願されたものであるところ(出願当初の明細書)、右形式の消火栓装置は、既に公知であること等を理由として拒絶理由通知(乙四の1)、拒絶査定(乙五の1)を受け、その後、出願人である原告は、実用新案登録請求の範囲の記載に「リールを首振り可能に支持する支持装置を設ける」等の記載を加える補正を行ったが、右「リールを首振り可能に支持する支持装置」の構成が不明確であるから、詳細な説明及び図面に開示されている装置に基づいて明確に規定するよう指摘され、再度、拒絶理由通知を受けた(乙七の1)。そこで、原告が、右支持装置は第1枠体8及び第2枠体9によって二段首振りの構成であることを具体的に明らかにした(乙七の2)結果、出願公告の決定がなされ(乙八の1)、実用新案登録を受けるに至ったのである。右経緯によれば、リール支持装置は、水平方向に二段の首振りが可能となるように枢支されている構成であることが明らかである。

本件考案にかかる消火栓装置は、右のようにリール支持部材である第1枠体8及び第2枠体9によって水平方向に二段の首振りが可能なように枢支されているため、リール2を引き出すとき、消火ホース5を引っ張るとリール支持部材である第2枠体9が回動して、一対の円盤体28、28のうちの奥側の円盤体28の外周端縁が格納箱1の背面板に当接し、次いで第1枠体8が回動することとなるから、全体的に円滑な水平方向への回動ができず、また、格納箱1の背面板や円盤体28の損傷の原因となる。

(2) これに対し、被告製品は、右1のとおり、本件考案でいう第2枠体9に相当する構成を具備せず、蝶番70の軸3cによって一段のみの水平方向の回動が可能なように支持されている。

したがって、被告製品は、一段首振りの作用によって回動初期からスムーズな水平方向への回動ができ、格納箱の背面板の損傷も生じないのであって、本件考案とは作用効果を異にする。

(二) 本件考案の構成要件Bにいう「格納箱の略中央」は、格納箱の奥行に対してリールが格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央に位置するという意味であるところ、被告製品は、右「格納箱の略中央」という構成を欠くから、構成要件Bを具備しない。

(1) 本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄に、リール格納位置について、「「略中央」という意味はリール2を奥行きが小のコンパクトな格納箱1内に効率良く格納しうる観点から解釈されねばならない。」(本件公報4欄17行~20行)と記載されており、この観点からすると、「略中央」とは、格納箱正面における縦・横方形状をなす開口の中央ではなく、格納箱の奥行に対してリールが格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央に位置するという意味であることは明らかである。本件考案にかかる消火栓装置は、このようにリールが格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央に位置する構成であるため、奥側の円盤体28と格納箱1の背面板間に所定の間隔を保持する必要があり(本件公報4欄15行~20行)、それだけ格納箱1の奥行幅が大きくなるのであり、格納箱1の背面板と奥側の円盤体28とを密接した状態に配設すると水平回動が不可能又は著しく困難になる。

原告は、「略中央」とは格納箱の開口部の略中央を意味するとし、本件考案は、リールを格納箱の略中央に位置させることにより、格納箱の縦寸法及び横幅寸法をより小さくすることができ、しかも、「支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されているので、奥行きを小とした格納箱であっても、これとリール2との干渉が防がれる結果、コンパクトにリール2を格納できる」(本件公報5欄19行~6欄3行)という作用効果を奏することができると主張するが、「略中央」が原告主張の「格納箱の開口部の略中央」の意味であるとすれば、当然のことであるから考案として全く無意味であるばかりでなく、前記実施例についての記載(本件公報4欄17行~20行)と矛盾するし、本件明細書に記載された右原告主張の作用効果を合理的に理解することもできない。

(2) これに対し、被告製品は、「蝶番70の軸3cをリール2の中心φから該リール2の半径Rに略等しい位置における格納箱1の開口部近くに配設」するという構成からなるものであり、「格納箱の奥行幅方向の中央」という構成がない。

被告製品は、格納箱1の開口部前面にリール支持部材3bでリール2を片持ち支持するとともに、右のように蝶番70の軸3cをリール2の中心φから該リール2の半径Rに略等しい位置における格納箱1の開口部近くに配設しているため、リールを格納箱1中央から背面板側に偏らせて密接した状態に格納でき、格納箱1の奥行を浅く形成できる上、リール2を引き出すときも格納箱1の背面板に当接することもなく、円滑に略一八〇度、水平回動できるのであって、本件考案とは作用効果を異にする。

3 仮に本件考案の構成要件Aにいう「首振り」が一段のものを含むとしても、一段首振りの消火栓装置は、本件考案の実用新案登録出願前に外国(ドイツ国)及び日本国内において頒布された刊行物に記載されて公知の技術となっていたから、本件考案の技術的範囲は、本件明細書記載の具体的実施例(首振りが二段のもの)に限定されるところ、被告製品は、一段首振りの消火栓装置であるので、本件考案の技術的範囲に属せず、原告の本訴請求は理由がない。

(一) ドイツ国のTOTAL・FOERSTNER社刊行の消防設備に関する本件カタログ(乙一の1)六五頁には、次のとおり、本件考案の構成要件をすべて充足する消火栓装置が掲載されている(なお、1は格納箱、2はリール、3aは支持部材、3bはリール支持部材、4は保形性を有する消火ホース、5は導水管、6はフレキシブルな導水ホース、7は消火栓、8は格納空間、9は放水ノズルである)。

 格納箱1の一側部に配した支持部材3aと、

 右支持部材3aによってホース巻回用リール2が水平方向へ首振り可能に枢支され、

 右リール2が回転可能に格納箱1に収納され、

 導水管5の流入部と消火栓7の噴出部がフレキシブルな導水ホース6で連通し、

 導水管の噴出部に保形性を有する消火ホース4の基端部を接続した消火栓装置。

そして、本件カタログの表紙の右上には「Ausgabe 80」(一九八〇年出版)、右下に「Sshutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」(INTERSCHUTZ '80の保証手数料一マルク)と印刷されていること、一九八〇年六月七日から同月一五日までの間、ドイツ国ハノーバーにおいてINTERSCHUTZ '80という防災見本市が開催されたこと(乙一〇ないし一四)、本件カタログと一体をなしている本件価格表(乙一の2)の表紙の左上に「preisliste 03/80」(価格表一九八〇年度第三版)と印刷され、右上に「Gultig ab 1. Juni 1980」(一九八〇年六月一日から有効)と印刷されていること、本件カタログ掲載の各商品の商品番号は、本件価格表記載の各商品番号と一致していること、本件価格表の表紙左下に表示されている写真は、表紙右下の右「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」の部分を除き、一九八〇年出版である本件カタログの表示と全く同一であること、本件カタログの末尾には、収納袋としての三角形状の袋が貼付されており(検乙一の1・2)、被告は本件価格表が右収納袋に収納された状態で本件カタログを購入したことから、本件カタログは、本件価格表と一体として、本件考案の出願日である昭和五五年(一九八〇年)一一月一七日よりも前の同年六月七日から同月一五日までの間に、右防災見本市の会場において頒布されたものであることが明らかであり、被告は、遅くとも同年八月末時点においては、日本国内のカタログ販売業者から購入していたものである。

(二) 被告は、昭和五五年八月頃、当時日本国内にあった三ないし四社のカタログ販売会社のうちの一社から本件カタログを購入して、所持していた(但し、入手先は特定できない)。当時、被告は、中近東や東南アジアの石油精製プラント設備の一部として必要であった消火・防災設備などを同方面に輸出していたので、外国他社の製品等に関する情報を得るために、カタログ販売会社から随時、各種カタログを購入していたのであり、本件カタログもその一つである。被告にとって、一年前や数年前のいわば時代遅れの商品や価格に関する情報は何の意味もないのであり、被告は、最新情報であるからこそ本件カタログ及び本件価格表を購入したのであるから、遅くとも昭和五五年八月末頃までには購入していたことが明らかである(なお、その後、円高のため消火・防災設備等の同方面への輸出を止めたことにより、必要性がなくなったので、カタログも購入しなくなった)。被告は、原告から送付された警告書に対する回答書では、本件カタログの存在や公知技術のことは全く触れていないが、原告から警告書の送付を受けた当時、侵害品との指摘を受けた消火栓装置(被告製品)をほとんど製造、販売しておらず、今後の販売実績も多くを望めない見通しであったことから、この際被告製品の製造、販売を中止することを決め、無用の争いを避けるため本件カタログの存在、公知技術を示すことなく、被告製品の製造販売を中止する旨の回答書を作成するよう弁理士に依頼したのである。本件考案が公知技術であるか否かの問題と、回答書に公知技術である旨記載されているか否かの問題とは、全く別の問題である。

(三) 原告は、商品カタログは、通常、予め設定した頒布日よりも相当前に印刷され、その後、カタログ記載の商品が揃ってその出荷が可能になった時点で頒布されるので、万が一、予め設定した頒布日までに商品の品揃えができなかった場合には、頒布を遅らせることもあるのであるから、本件カタログの表紙に「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」と印刷されているからといって、本件カタログがINTERSCHUTZ '80において頒布されたと断定することはできないと主張するが、一九八〇年六月七日から同月一五日までの間、ドイツ国ハノーバーにおいて防災見本市が開かれたことは同見本市のカタログ(乙一二)によって明らかであり、本件カタログの表紙に右のとおり「Schutzgebuhr aur der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」と印刷されているにもかかわらず、INTERSCHUTZ '80において本件カタログが頒布されなかったとか、商品の品揃えができなかったために本件カタログの頒布を遅らせたとかいう事実があるというのであれば、むしろ原告が主張立証すべきものである。

本件価格表の表紙の左下に印刷されているカタログの表紙の縮小サイズのものは、本件カタログの表紙の右下に印刷されている「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」との部分が欠けているが、被告は、本件価格表の表紙の左下に印刷されているカタログの表紙の縮小サイズのものは本件カタログの表紙を縮小サイズにして印刷したものであると主張しているのではない。前記のとおり、本件カタログ掲載の各商品の商品番号は、本件価格表記載の各商品番号と一致していること、本件カタログの末尾には収納袋としての三角形状の袋が貼付されていること(検乙一)などから、本件カタログと本件価格表とが一体をなすものであることは明らかである。本件カタログと同じ一九八〇年版のカタログは、一九八〇年六月七日以前の時点において「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」との表示のない形で既に頒布されていたところ、本件価格表の表紙にはそのカタログの縮小サイズを掲載し、前記防災見本市において頒布するカタログ(本件カタログ)には、右表示を付したものである。そして、「Gultig ab 1. Juni 1980」(一九八〇年六月一日から有効)と印刷した本件価格表を、一九八〇年六月一日あるいは同年一一月一七日(本件考案の出願日)より後の日に刊行、頒布することは、新しい商品価格を一方的に過去に遡って適用することになり、売買当事者に混乱を生じせしめることが必至であるから、このようなことは通常考えられない。

(四) 原告は、本件カタログには本件考案の構成要件C、D及びEについては全く開示されていない旨主張するが、以下のとおり開示されている。

(1) まず、本件カタログ六一頁に掲載されている各消火ホース接続装置につき、導水ホースはリールに巻き付けられて収納されているから、ホースは当然のこととして、柔らかいすなわちフレキシブルなものであることは明らかである。

また、原告指摘の「mit formfestem Wasserschlauch」にいう「formfest」は、形を固定している、形を保っている、という意味であるから、「保形性を具備するホース」に当たることは明らかである。

(2) 原告は「Innenteile: Wasserfuhrend, aus Messing」は、格納箱の構造として内部を説明したものである旨主張するが、格納箱のボックス(Kasten)が薄鋼板製であるにもかかわらず、内部のみが真鍮製であったり、水を導いたりすることはありえないから、説明文の前後の関係から明らかなとおり、右記載は、リールの「内部の部品」(Innenteile)が「水を導き、真鍮製」であることを説明したものである。

更に、原告は、本件カタログ六一頁では「C/Bホースのための接続バルブ」は「認可申請中」と表示されており、接続バルブの写真が掲載されていないから、少なくとも製造販売はされていなかったものと思われると主張するが、被告は、本件カタログ六一頁掲載の基本モデルであるA<2>、すなわち六五頁に掲載されている商品をもって、本件考案の出願前の公知技術であると主張しているのであり、A<3>記載の接続バルブは「認可申請中」ではないから、B<3>、C<3>記載の接続バルブが原告主張のように「認可申請中」であっても(その写真は掲載されている)、全く関係がない。同様に、仮に原告主張のように本件カタログ七〇頁の「壁の消火栓の付属品」のうち、「Schnelleinsatzhaspel」(素早く使えるリール)以下の写真が掲載されていないとしても、本件には関係がない。

(五) 本件カタログには、首振りが一段の場合の本件考案の構成要件をすべて充足する消火栓装置が記載されているのであって、構成要件の一部が記載されているというものではない。

二  争点二(被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合に、賠償すべき損害の額)について

【原告の主張】

被告は、平成三年七月一日から平成五年三月一二日までの間に、被告製品を五〇〇〇台以上製造、販売した。

被告製品の一台当たりの販売価格は一〇万円であり、本件考案の通常の実施料率は五%が相当であるから、原告は、実用新案法二九条二項に基づき、二五〇〇万円の実施料相当額の損害の賠償を求める。

【被告の主張】

被告が平成三年七月一日から平成五年三月一二日までの問、被告製品を製造、販売したことは認めるが、その台数、販売価格、実施料率についての原告の主張は争う。

第五  争点に対する当裁判所の判断

一  争点一(被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するか)について

1  被告製品の特定については、前記第二の一4のとおり、被告製品が別紙第一物件目録添付の第1ないし第14図によって表されること自体は争いがなく、その構成の表現の仕方について、原告は別紙第一物件目録記載のとおり主張するのに対して、被告は第二物件目録記載のとおり主張し、構成a及びbの説明の仕方に相違があり、これに伴い図面における符号の付し方に若干の相違があるが、その余の点は、構成cないしfの説明を含め、争いがない。

右相違は、要するに、構成aにつき、原告が「格納箱1の内部の右側板又は左側板に支持部材3aが取り付けられており、この支持部材3aにリール支持部材3bの基端部が、水平方向に首振りが可能なように枢支されている。」と主張するのに対し、被告は「格納箱1の内部の右側板又は左側板の格納箱1の開口寄りにリール支持部材3bの取付け用固定部材30aが固着され、右取付け用固定部材30aに正面部30Aと側面部30Bとを備えた中央横断面L字状の連結片30がその正面部30Aを格納箱1の開口側に位置させて連結されているとともに、先端部背面にリール2を回転自在に片持ち支持してなるリール支持部材3bの基部3・と、前記連結片30の正面部30Aとが、横断面L字状の一対の蝶番片60・60と軸3cとからなる蝶番70の前記蝶番片60・60とそれぞれ連結され、」と主張し、構成bにつき、原告が「前記リール支持部材3bの先端には、リール2が回転可能に支持されており、かつ、リール2を格納箱1内へ収納した状態では、前記リール2の中心水平軸は格納箱1のほぼ中央に位置している。」と主張するのに対し、被告は「右蝶番70の軸3cをリール2の中心φから該リール2の半径Rに略等しい位置における格納箱1の開口部近くに配設して、リール2を格納箱1の開口部から水平方向に回動可能に構成し、」と主張し、これに伴い、図面における一部の符号の付し方を変えるものである。

構成aについての被告の主張は、本件考案の構成要件Aにいう「首振り」は二段のものに限られるとする立場から、被告製品の「首振り」が一段であることを、原告のように「首振り」という語を用いることなく、構造の点から細部にわたって説明するものであるが、被告製品の「首振り」が一段であること自体は原告も認めるところであり、ただ、本件考案が「首振り」が一段のものを含むか否かが争点になっているにすぎないから、被告主張のように構造の点から細部にわたって説明する必要はなく、証拠(検甲一ないし六)によれば原告主張のとおり表現することで足り、そのように特定するのが相 当と認められる。

構成bについては、本件考案の構成要件B「中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、」にいう「格納箱の略中央」の解釈に関して、原告は、「格納箱の開口部の略中央」を意味し、被告製品はこれを充足するとする立場から説明するものであり、被告は、「格納箱の奥行幅方向の中央」を意味し、被告製品はこれを充足しないとする立場から説明するものであって、右構成要件Bにいう「格納箱の略中央」の解釈いかんと切り離すことができないから、この点の解釈についての判断(後記2(二))の後に判断することとする。

2  被告製品の構成を本件考案の構成要件と対比するに、被告製品の争いのない構成c、d及びeが、それぞれ本件考案の構成要件C、D及びEを充足していることは明らかであるので、以下、被告製品の構成aが本件考案の構成要件Aを、被告製品の構成bが本件考案の構成要件Bをそれぞれ充足しているかについて、検討する。

(一) 被告製品の前記認定の構成a「格納箱1の内部の右側板又は左側板に支持部材3aが取り付けられており、この支持部材3aにリール支持部材3bの基端部が、水平方向に首振りが可能なように枢支されている。」が、本件考案の構成要件A「格納箱の一側部側に配した支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、」を充足するかについて検討するに、被告製品の「首振り」が「段であることは前記のとおり当事者間に争いがなく、右構成aから明らかであるところ、原告は、本件考案にいう「首振り」は一段のものも当然に含むと主張し、被告は、二段のものに限られ一段のものを含まないと主張する。

本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「水平方向の首振りが可能なように」とのみ記載されており、特に「首振り」が一段のものを含まないとか、二段のものに限るという記載はないところ、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄に具体的な実施例として図面を持って示されているのは「首振り」が二段のものだけであるが、同欄には「上記実施例においては、リール支持部材(第2枠体がこれに該当する。)9が、支持軸7及び第1枠体8からなる支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されている。そして、支持軸7を中心とする首振りと、第1枠体8の先端側部分を中心とする首振りの2段の首振りが可能なように構成されているが、本考案はこれに限定されず前記首振りが一段の場合をも含む。」(本件公報4欄5行~12行)と記載されており、「首振り」が一段のものを含むことが明記されている。

もっとも、「首振り」が一段のものについては具体的な構成が何ら記載されていないが、「首振り」が二段のものを一段のものに変更するということは、二段階の回動をするものを一段階の回動をするものに変更することであるから、いずれか一方の回動をしないようにすれば(例えば、具体的な実施例における「第1枠体8の先端部で水平方向の首振りが可能となるように枢支される矩形状の第2枠体9」〔本件公報2欄27行~3欄2行〕を、第1枠体8に枢支しないで固着すれば)、一段階の回動をするものとなることは当業者でなくとも自明の事柄であるというべきである。したがって、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄には、図面を持って示されている具体的な実施例の記載と右の「本考案はこれに限定されず前記首振りが一段の場合をも含む。」との記載によって、「首振り」が一段のものも、当業者が容易にその実施をできる程度に記載されているというべきである。被告指摘の「考案の詳細な説明」の欄の記載(本件公報2欄24行~3欄2行)は、一実施例(前記の図面をもって示されている具体的な実施例)についての記載であって、この記載を根拠に本件考案にいう「首振り」が二段のものに限定されるとすることはできない。

また、被告は、本件考案の出願についての審査、審判の経緯によれば、リール支持装置は水平方向に二段の首振りが可能となるように枢支されている構成であることが明らかである旨主張するが、証拠(乙三、四の1~3、五の1・2・4、七の1・2、八の1・2)によって認められる右経緯によっても、本件考案の構成要件Aにいう「首振り」を二段のものに限定する根拠を見出すことはできない。

すなわち、出願当初の明細書の実用新案登録請求の範囲には、「(1) リールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とを導水ホースで連通すると共に、リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。(2) 前記消火ホースをスパイラル状の芯線を内部に有する保形性ホースで構成した実用新案登録請求範囲第1項記載の消火栓装置。」と記載されていた(乙三)ところ、実公昭二七-四六九七号実用新案公報(乙四の2)記載の考案に基づいて出願前に極めて容易に考案をすることができたものであるとし、なお「こうした形式の消火栓装置はよく知られており、上はその一例である。」とする拒絶理由の通知を受けたので(乙四の1)、原告(出願人)は昭和六二年九月四日付意見書を提出したが(乙四の3)、結局、「リールの中心部に配する導水管をリールの消火ホース捲付部に向けて開口することは従来技術の単なる設計変更であり、この導水管と消火液の供給口とを導水ホースで連通することは常套手段に相当する。」として拒絶査定を受けた(乙五の1)。原告は、昭和六三年三月一〇日付で右拒絶査定に対する不服の審判を請求する(乙五の2)とともに、同年四月九日付手続補正書により、実用新案登録請求の範囲の記載を「(1) リールを首振り可能に支持する支持装置を設けると共に、リールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。」と補正したところ(乙五の4)、明細書及び図面の記載が不備であり、「請求の範囲の項記載の『リールを首振り可能に支持する支持装置』が構成不明確である故、詳細な説明並びに図面に開示された同支持装置に基づいて明確に規定されたい。」とする再度の拒絶理由の通知を受けた(乙七の1)。原告は、昭和六三年一一月二八日付意見書に代わる手続補正書により、実用新案登録請求の範囲の記載を、現在の本件明細書記載のとおり「格納箱の一側部側に配した支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。」と補正し(乙七の2)、その結果、拒絶査定を取り消し、実用新案登録をすべきものとする審決がなされた(乙八の1・2)。右の経緯によれば、昭和六三年四月九日付手続補正書により、出願当初の実用新案登録請求の範囲の記載にはなかった「リールを首振り可能に支持する支持装置」が構成要件として加えられ、再度の拒絶理由の通知を受けて同年一一月二八日付意見書に代わる手続補正書により、右「リールを首振り可能に支持する装置」の構成が「格納箱の一側部側に配した支持部材によって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材」というように明確にされたのであって、「首振り」が一段であるか二段であるかは特段問題となっていたわけではなく、「首振り」が二段のものに限定したが故に本件考案は実用新案登録を受けることができたという関係にはない。

以上のとおり、本件明細書の記載及び本件考案の出願についての審査、審判の経緯による限り、本件考案の構成要件Aにいう「首振り」は二段のものに限られず、一段のものを含むと解すべきであるから、その限りでは、被告製品の構成aは本件考案の構成要件Aを充足するといわざるをえない(但し、後記3の判断参照)。

(二) 次に、被告製品の構成bが、本件考案の構成要件B「中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、」を充足するかについて検討するに、右構成要件Bにいう「格納箱の略中央」の意味について、原告は、格納箱の開口部の略中央を意味すると主張し、被告は、格納箱の奥行きに対してリールが格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央に位置するという意味である旨主張する。

本件考案の実用新案登録請求の範囲には「中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリール」と記載されているのみであるが、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄における「第1管体11aはリール2の中心軸と一致するように配設し、この先端部16に第2管体11bの基部17を水密状態に套嵌し、且つ第1管体11aと第2管体11b間に軸受18を介在させ、リール2がその中心軸の回りに自在に回転するように構成する。」(本件公報3欄16行~21行)、「上記実施例では、リール2の中心水平軸が第1管体11aの中心と一致しているが本考案は、これに限定されない。」(4欄12行~15行)との記載及び第3図(主要部の拡大縦断左側面図)によれば、第1管体11aはリール2の回転中心を貫通する方向に中心軸を有しており、リール2の中心水平軸がこれと一致するというのであるから、リール2の中心水平軸とは、リール2の回転中心を貫通する方向の軸(回転軸)と解するほかはないところ、かかるリール2の中心水平軸について、「リール2の中心水平軸が第1図に示すようにリール2の格納時に格納箱1の略中央に位置することが必要であるが」(本件公報4欄15行~17行)と記載されているのであり、格納箱の開口部を正面から見たところの第1図において、リール2の中心水平軸(紙面に垂直であって、点として表される)が格納箱の開口部の「略中央」に位置しているのであるから、「格納箱の略中央」とは、原告主張のように格納箱の開口部の略中央を意味すると解するのが相当である。

もっとも、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄には、右の記載に続いて被告指摘の「「略中央」という意味はリール2を奥行きが小のコンパクトな格納箱1内に効率良く格納しうる観点から解釈されねばならない。」(本件公報4欄17行~20行)と記載されているが、この記載から、被告主張のように「格納箱の略中央」とは格納箱の奥行幅方向(平面視)の中央を意味すると解するとすれば、格納箱の開口部を正面から見たところの第1図には「略中央」がどこなのか示されていないことになるし、前記のとおりリール2の回転中心を貫通する方向の軸(回転軸)である「リール2の中心水平軸」が格納箱の奥行方向の中央に位置するためには、リール2(の主要構成部材たる左右一対の円盤体)が格納箱1の開口面に垂直に(リール2の中心水平軸が開口面と平行に)位置することになってしまうが、このような配置は、第1図(正面図)だけでなく、本件明細書全体の記載に合致しないことが明らかである。結局、右の「「略中央」という意味はリール2を奥行きが小のコンパクトな格納箱1内に効率良く格納しうる観点から解釈されねばならない。」との記載における「奥行きが小のコンパクトな格納箱」は単に格納箱の形状を述べたものにすぎず、右記載は、リールの中心水平軸が格納箱の開口部の「中央」に位置するものであることを前提に、その「中央」とは正確に格納箱の中心である一点ではなく、リール2が効率良く格納箱1内に格納できる範囲であれば足りることを示していると解すべきである。このように解することは、本件考案の奏する作用効果についての「中心水平軸が格納時に格納箱1の略中央に位置するリール2を回転可能に支持しているので、格納箱1の内部空間を有効に利用してリール2を格納でき、又リール2を前方に水平回動させて使用状態とするときも、前記支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されているので、奥行きを小とした格納箱1であっても、これとリール2との干渉が防がれる結果、コンパクトにリール2を格納できる」(本件公報5欄14行~6欄3行)との記載ともよく合致するものである。以上に反する被告の主張は採用することができない。

以上のとおり、本件考案の構成要件Bにいう「格納箱の略中央」とは原告主張のとおり格納箱の開口部の略中央を意味するものであって、被告主張の奥行幅方向(平面視)の中央を意味するものではないから、右解釈に立って被告製品の構成bを本件考案の構成要件Bと対比するのに適切であるように、原告の主張をより明確にして「前記リール支持部材3bの先端には、リール2が回転可能に支持されており、かつ、リール2を格納箱1内へ収納した状態では、前記リール2の中心水平軸は格納箱1の開口部のほぼ中央に位置している。」と特定するのが相当である。

したがって、「リール2の中心水平軸は格納箱1の開口部のほぼ中央に位置している」という被告製品の構成bは、本件考案の構成要件Bを充足することが明らかである。

3  しかして、被告は、仮に本件考案の構成要件Aにいう「首振り」が一段のものを含むとしても、一段首振りの消火栓装置は、本件考案の実用新案登録出願前に外国(ドイツ国)及び日本国内において頒布された刊行物であるTOTAL・FOERSTNER社刊行の消防設備に関する本件カタログ(乙一の1)六五頁に、本件考案の構成要件をすべて充足する消火栓装置が掲載されて公知の技術となっていたから、本件考案の技術的範囲は、本件明細書記載の具体的実施例(首振りが二段のもの)に限定されるところ、被告製品は、一段首振りの消火栓装置であるので本件考案の技術的範囲に属さず、原告の本訴請求は理由がない旨主張するので、以下検討する。

(一) まず、本件カタログの刊行、頒布の時期について検討するに、証拠(乙一の1・2、一一、一二、検乙一の1・2)によれば、本件カタログ(乙一の1、検乙一の1)の表紙には、「TOTAL Feuerwehr Ausrustung」(TOTALの消防設備)という表題のすぐ右下に「Ausgabe 80」(一九八〇年出版)、右下隅に斜めに「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」 (INTERSCHUTZ '80の保証手数料 一マルク)と印刷されていること、「INTERSCHUTZ '80」という防災見本市が、一九八〇年六月七日から同月一五日までの間、ドイツ国ハノーバーにおいて開催されたこと(乙一一、一二)、本件価格表(乙一の2)には、表題のすぐ下に「03/80」、右上の星形の中に「Gultig ab 1. Juni 1980」(一九八〇年六月一日から有効)、左下に本件カタログの表紙(但し、本件カタログの表紙の右下隅に斜めに印刷された「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」との印刷はされていない)を縮小した写真が印刷されていること、本件価格表の三頁には、本件カタログの六二頁ないし六七頁に掲載されている商品の商品番号(Art. -Nr.) 907.015から907.335までとその価格が連続してすべて掲載されていること、本件カタログの裏表紙の裏側(内側)の右下隅に三角形の収納袋が貼付されていること(検乙一の1・2)が認められ、証拠(乙一〇、証人藤田勝)によれば、被告は、昭和五五年(一九八〇年)当時、防災設備を中近東や東南アジア方面に輸出していたので、その際の参考にするため、日本国内の株式会社ワールドサンプルカタログセンター等の三ないし四社のカタログ販売会社から随時送付されてくる外国製の防災設備関係のカタログを必要に応じて購入していたところ、本件カタログも、その頃にそのようにして株式会社ワールドサンプルカタログセンター以外のカタログ販売会社から購入したものの一つであり、本件カタログの右収納袋に本件価格表が収納された状態(検乙一の2)で送付されてきたものを購入したものであることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

被告がカタログ販売会社から本件カタログを購入した正確な年月日(被告は遅くとも昭和五五年八月末と主張する)については、これを認めるに足りる証拠はないものの、右のような事実が認められ、他に特段の事情も窺われないから、本件カタログは、本件価格表と一体をなし、本件考案の実用新案登録出願日である昭和五五年(一九八〇年)一一月一七日より前の同年六月七日から同月一五日までの間、ドイツ国ハノーバーにおいて開催された「INTERSCHUTZ '80」という防災見本市において頒布されたものと優に推認することができる。

原告は、本件カタログの存在自体が疑わしいと主張するが、本件カタログは現に存在していて証拠として提出されているのであり、右主張が原本の存在を問題とするのであれば、本件カタログは、写しではなく、原本自体が証拠として提出されたものであるし、本件カタログが一九八〇年当時ではなく、後日作成された内容虚偽のものであるとの意味であるとしても、そのような事実を窺わせる事情は全く認められない。

原告は、原告が被告に対して本件訴訟の提起前に平成五年一月二二日付内容証明郵便で警告書(甲三)を送付したのに対して被告が送付してきた同年三月一一日付回答書(甲四)では、調査検討に時間を要したこと、被告製品の製造販売を中止することは記載されていたものの、本件カタログの存在や公知技術のことは全く触れられていなかったのであり、被告がもし被告主張のとおり昭和五五年当時に本件カタログを購入し、所持していたのであれば、右のような回答書の内容にはならなかったはずであり、殊に、原告の右警告書は、被告製品の製造販売を中止すれば過去の侵害に基づく損害賠償を不問に付するというのではなく、現在までの製造台数、販売台数、販売先、販売価格、売上総額の回答までも求めているのであるから、回答書の中で本件カタログの存在を示し、本件訴訟におけると同じ主張をしていて当然である旨主張する。証拠(甲三ないし五)によれば、原告は被告に対し、平成五年一月二二日付警告書(甲三)により、被告製品の製造販売は本件実用新案権を侵害するものであるとして、一五日以内に、その製造販売を中止するよう要求するとともに、被告製品について原告主張の製造販売台数等を報告するよう要求したこと、被告は、山本孝弁理士を代理人として、同年三月一二日付回答書(甲四)により、回答が遅れたことを謝罪するとともに、種々検討の結果同日をもって被告製品の製造販売を中止することとした旨回答したこと、原告は、被告に対し、同年四月二日付警告書(甲五)により、改めて被告製品の製造販売台数等を報告するよう要求するとともに、販売済みの被告製品の回収・廃棄までは求めないが、損害賠償は請求する旨を明確に表明したことが認められ、被告が本件訴訟前に原告に対し本件考案の出願前の公知技術についての資料として本件カタログの存在を主張したことを認めるに足りる証拠はない。このことについて、証人藤田勝は、被告が原告の平成五年一月二二日警告書(甲三)を受け取った時点において、被告製品は価格が高い等の理由で売行きが悪く将来の見通しも暗かったので、被告は、製造販売の中止を決め、山本孝弁理士に相談し、本件カタログを提示するとともに被告製品の製造販売を中止するとの被告の方針を伝えたが、同弁理士は、被告の方針が製造販売の中止ということであれば、無用の争いを避けるために本件カタログのことには言及しなくてもよいと判断して、被告の代理人として前記のような内容の回答書を原告に送付するに至った旨証言するところ、実用新案権者(原告)が侵害品の製造販売台数等の報告を要求していたとしても、侵害者とされた者(被告)が右のような対応をとることは考えられないことではなく、これに反する証拠もないから、右証言は採用できるものであり、被告が本件カタログを購入した正確な年月日は、前記のように不明であるものの、右認定のような警告書、回答書のやりとりの経緯は、本件カタログは本件価格表と一体をなし、昭和五五年六月七日から同月一五日までの間ドイツ国ハノーバーにおいて開催された「INTERSCHUTZ '80」という防災見本市において頒布されたものであるとの前記推認を何ら左右するものではない。記録によれば、原告が平成六年六月二三日に提起した本件訴訟においても、被告が本件カタログにより出願前の公知技術の存在に基づく主張をしたのは、原告主張のように平成七年七月一〇日付の準備書面(四)においてが初めてであることが明らかであるが、このことも、同様に前記推認を何ら左右するものではない。

また、原告は、本件カタログの表紙には「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」(INTERSCHUTZ '80の保証手数料 一マルク)と印刷されているが、商品カタログは、通常、予め設定した頒布日よりも相当前に印刷され、その後、カタログ記載の商品が揃ってその出荷が可能になった時点で頒布されるので、万が一、予め設定した頒布日までに商品の品揃えができなかった場合には、頒布を遅らせることもあるのであるから、本件カタログ及び本件価格表に「一九八〇年出版」又は「一九八〇年六月一日から有効」と印刷されているからといって、本件カタログがINTERSCHUTZ '80において頒布されたと断定することはできない旨主張するが、確かに原告主張のような事態が絶対に起こりえないとはいえないものの、本件カタログは、ドイツ国ハノーバーにおいて現実に開催された右INTERSCHUTZ '80という防災見本市用に、わざわざ「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ DM1,-」(INTERSCHUTZ '80の保証手数料 一マルク)との印刷を付したものであるから、格別の事由のない限り、右防災見本市において頒布されたものと推認するのが合理的であり、本件全証拠によるも、右推認を妨げるような格別の事由の存在は認められない。

更に、原告は、本件価格表の表紙の左下に印刷されているカタログの表紙の縮小サイズのものは、本件カタログの表紙の右下に印刷されている「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」の部分が欠けており、本件カタログの表紙を縮小サイズにして印刷したものでないことが明らかであるから、本件価格表が本件カタログと一体をなしていたものとは到底いえないとも主張するが、前記のとおり、本件カタログの裏表紙の裏側(内側)の右下隅に三角形の収納袋が貼付されており、現に、被告は、本件カタログの右収納袋に本件価格表が収納された状態で送付されてきたものを購入したものであり、本件価格表の表紙の写真における右「Schutzgebuhr auf der INTERSCHUTZ '80 DM1,-」の部分の欠如の点については、本件カタログの表紙は、本来右部分の印刷をしないスタイルのものであって、本件価格表の表紙にはこの本来のスタイルのものを縮小したものを印刷していたが、本件カタログは、INTERSCHUTZ '80用にわざわざ右部分の印刷を付したものであるが故に、完全には一致しないことになったものと推認するのが相当である。

(二) 次に、被告は、本件カタログ六五頁には、本件考案の構成要件をすべて充足する消火栓装置が掲載されていると主張し、原告は、本件考案の構成要件A、Bが開示されているだけであって、構成要件C、D及びEは全く開示されていないと主張するので、この点について判断する。

(1) 本件カタログ(乙一の1)六五頁に掲載されている消火栓装置の構成を、本件考案の構成要件に対応させて、被告が付した符号を用いて分説すると、次のとおりであることが認められる。

格納箱1の一側部側に配した支持部材3aによって水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材3bに、

 中心水平軸が格納時に格納箱1の略中央に位置するリール2を回転可能に支持し、

 このリール2の中心部に配設した導水管5の流入部と消火栓7の吐出部とをフレキシブルな結合ホース6で連通する一方、

 リール2の消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管5の吐出部に消火ホース4の基端部を接続し、

 かつ、前記消火ホース4を保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。

(2) 原告は、右構成に関して、本件カタログ六一頁記載の「mit faltb arem Druckschlauch」の語は「折り畳み可能な圧力ホース(又は導水ホース)という意味であり、「フレキシブルな導水ホース」と解釈できる語ではない旨主張する。

しかし、本件カタログ六一頁には、上段に「Grundmodelle」(基本モデル)として、<1>「mit faltbarem Druckschlauch Seite62」(折り畳み可能な圧力ホース 六二頁)、<2>「mit formfestem Wasserschlauch Seite65」(形状が保持される注水ホース 六五頁)、<3>「fur C- u. B-SchlauchanschluBventil」(C/Bホースのための接続バルブ六八頁)の三種類が記載され、それぞれの基本モデルについて、中段に消火器と組み合わせたもの(六三頁、六六頁)が、下段に消火器及び火災警報機と組み合わせたもの(六四頁、六七頁)が記載されているのであって、右<1>「mit faltbarem Druckschlauch Seite62」(折り畳み可能な圧力ホース 六二頁)の基本モデルは、六一頁及び六二頁の写真からも明らかなとおり、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄にいう「ポリエステル糸、ビニロン糸等を素材とする布地の裏面にゴムを接着した消火ホースを使用し、その先端にノズルを取着すると共にその基端部を消火栓の吐出部に直接接続している。そして消火ホースを消火栓格納箱にコンパクトに収納するために、多数の櫛杆を備えたホース架けにホースを折り曲げながら掛吊したり、中央部で折返し二つ折状に扁平に折畳んだホースをリールに捲付けたりしている」という「従来一般の消火栓装置」(本件公報1欄15行~23行)、すなわち、消火ホースが折り畳み可能であり、その先端にノズルを取着しその基端部を消火栓の吐出部に直接接続していて、本件考案にいう導水ホースや導水管を備えないものであるから、本件考案とは関係がない。本件考案の構成要件をすべて充足すると被告の主張する消火栓装置は、右<2>「mit formfestem Wasserschlauch Seite65」(形状が保持される注水ホース 六五頁)の基本モデルのものであって、構成要件Cにいう「このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とを連通する」「導水ホース」に対応するものは、Verbindungs-Schlauch(結合ホース)6であることが明らかである。

しかして、本件考案の構成要件Cにいう「フレキシブルな」導水ホースとは、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄の「この導水ホース21としては従来一般に使用される可撓ホースを使用すればよいが、本考案の消火ホースと同様のホースを使用することも可能である。」(本件公報3欄24行~27行)との記載及び本件考案にかかる消火栓装置の構造に照らし、導水ホースがリールの回動を許容する程度の可撓性を有することを意味し、それ以上の格別の意味を有するものではないと解される。そうすると、本件カタログ六五頁記載の消火栓装置におけるVerbindungs-Schlauch(結合ホース)6は、リール2の中心部に配設した導水管5の流入部と消火栓7の吐出部との間に接続された状態で、リール2が二七〇度回動可能(um 270° schwenkbar)であるというのであるから、右結合ホース6は、本件考案の構成要件Cにいう「フレキシブルな」導水ホースの要件を充足することが明らかである。

(3) 原告は、構成について、「mit formfestem Wasserschlauch」の語は「固い、丈夫なホース」あるいは「固定されたホース」という意味であり、「保形性を具備するホース」と解釈することはできない旨主張するが、右の「mit formfestem Wasserschlauch」は「mit faltbarem Druckschlauch」(折り畳み可能な圧力ホース)と対比されるものであり、折り畳みが可能でない、form(形)がfest(不変)な注水ホース(形状が保持される注水ホース)、すなわち保形性を具備するホースと解釈するのが相当であり、原告の右主張は採用することができない。

(4) 更に、原告は、構成について、本件カタログ六五頁記載の「Innent eile: Wasserfuhrend, aus Messing」(内部部品:水を導き、真鍮製)との記載は、リールの内部についての説明ではなく、格納箱(Einbausch rank)の構造として内部を説明したものであることが明らかであり、同頁掲載の写真によっても、導水管の吐出部に消火ホースの基端部が接続されているかどうか、その接続部分が全く不明である旨主張する。

本件カタログの六五頁の前後の頁の記載を見ると、六二頁ないし六四頁の「mit faltbarem Druckschlauch」(折り畳み可能な圧力ホース)を有するタイプでは、右「Innenteile: Wasserfuhrend, aus Messing」(内部部品:水を導き、真鍮製)との記載がなく、六六頁、六七頁の、六五頁記載の消火栓装置と同じように「mit formfestem Wasserschlauch」(形状が保持される注水ホース)を有するタイプでは、右記載のあることが認められるから、右記載は、「mit formfestem Wasserschlauch」(形状が保持される注水ホース)を有するタイプに特有の構成を説明するものであることが明らかである。そして、六五頁の写真によれば、前記構成のとおり、リール2の中心部に配設した導水管5の流入部と消火栓7の吐出部とは結合ホース6で連通されていることが明らかであり、同頁において、この結合ホースについては「消火バルブのための一インチ、二分の一C継手と曲管を持つ」との説明があり、消火栓装置の他の主要箇所についても説明があるが、この結合ホース6と消火ホース4との接続部分についての説明は、「Innenteile: Wasserfuhrend, aus Messing」(内部部品:水を導き、真鍮製)との記載を除いては、該当する部分がないことを併せ考えれば、右記載は、薄鋼板製のリールの内部部品が水を導き、真鍮製であること、すなわち本件考案にいう「導水管」に相当するものであることを説明していると解するほかはない(これに反し、もし原告の主張するように「格納箱の構造として内部を説明したもの」であるとすれば、「mit faltbarem Druckschlauch」(折り畳み可能な圧力ホース)を有するタイプの説明において右記載がないのは不合理であるし、「真鍮製」はともかくとしても、格納箱の内部が「水を導き」というのはいかなる意味であるのか全く理解できないことになる)。

そして、消火栓7の吐出部からの水が結合ホース6、導水管5の流入部を経由して消火ホース4から放水されるという消火栓装置の機能を前提に六五頁の写真を見れば、当業者ならずとも、リール2の消火ホース捲付部に向け開口する導水管5の吐出部に消火ホース4の基端部が接続されていると極めて容易に理解できるものといわなければならない。

したがって、本件カタログ六五頁記載の消火栓装置は、前記構成を備えているということができる。

原告は、本件カタログ六一頁では、「C/Bホースのための接続バルブ」は「認可申請中」と表示されており、接続バルブの写真が掲載されていないから、少なくとも製造販売はされていなかったものと思われるとか、同七〇頁の「壁の消火栓の付属品」のうち、「Schnelleinsatzhaspel」(素速く使えるリール)以下の写真が掲載されていないと主張するが、本件カタログ六五頁に前記の構成を備える消火栓装置が記載されているとの前記認定には何ら影響しない事柄である。

(5) そこで、本件カタログ六五頁記載の消火栓装置を本件考案と対比すると、その構成が本件考案の構成要件A、B、C、D、Eをそれぞれ充足することは明らかであり、前記(一)説示のとおり、本件カタログは、本件考案の実用新案登録出願日である昭和五五年(一九八〇年)一一月一七日より前の同年六月七日から同月一五日までの間、ドイツ国ハノーバーにおいて開催された「INTERSCHUTZ '80」という防災見本市において頒布されたものであるから、本件考案の構成要件をすべて充足する消火栓装置が、本件考案の実用新案登録出願前に外国において頒布された刊行物に記載されていたことになる。

(三) そうすると、本件考案は、出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であり、その実用新案登録には実用新案法三七条一項二号、三条一項三号所定の無効事由があることになる。

原告は、本件カタログに一段首振りの消火栓装置が記載されているとしても、本件考案は水平方向への首振りが一段の場合も二段の場合も含むものであるから、本件カタログの刊行、頒布によっても、本件考案の構成要件のすべてを充足する消火栓装置が公知であったとはいえないのであり、考案がその出願前に全部公知であるというのは、考案の構成要件のすべてを充足する公知技術が存在するということであるから、考案の構成要件の一部が公知技術と同一であっても、当該考案の技術的範囲の解釈に影響しないと主張する。しかし、なるほど本件カタログ六五頁記載の消火栓装置は首振りが一段のものであることが明らかであり、前記2(一)説示のとおり、本件考案は、本件明細書の記載及び本件考案の出願についての審査、審判の経緯による限り、その構成要件Aにいう「首振り」が一段のものも、二段のものも含むものではあるが、本件カタログ六五頁記載の消火栓装置は、首振りが一段のものとしては本件考案の構成要件AないしEの一部ではなく、そのすべてを一体的に備えているのであるから、本件考案は、いわゆる出願前全部公知の考案であることは明らかであり、原告の右主張は到底採用することができない。

4  以上によれば、本件考案の構成要件Aにいう「首振り」は、本件明細書の記載及び本件考案の出願についての審査、審判の経緯による限り、二段のものに限られず、一段のものを含むと解すべきことは前記2(一)説示のとおりではあるが、右3説示のとおり、本件考案は、首振りが一段のものについて、出願前に外国において頒布された刊行物に記載された考案であるから、その実用新案登録には無効事由があるというべきところ、本件考案について現に実用新案登録がなされていて、これが無効審判によって無効とされるまでは裁判所としては有効なものとして扱わざるをえない以上、本件考案は、その技術的範囲を、首振りが一段のものは除外して、二段のものに限定して実用新案登録を受けたものと解するほかはない。

そうすると、被告製品は、首振りが一段のものであるから、本件考案の構成要件Aを充足せず、その技術的範囲に属しないといわなければならない。

したがって、被告製品が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことになる。

二  結論

よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する(平成九年九月二五日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 小出啓子 裁判官田中俊次は転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官 水野武)

<19>日本国特許庁(JP)<11>実用新案出願公告

<12>実用新案公報(Y2) 平1-9589

<51>Int.Cl.4A 62 C 35/20 33/04 識別記号 庁内整理番号6730-2E 6730-2E <21><44>公告 平成1年(1989)3月16日

<54>考案の名称 消火栓装置

審判 昭63-4277 <21>実願昭55-165162 <65>公開 昭57-87766

<22>出願 昭55(1980)11月17日 <43>昭57(1982)5月29日

<72>考案者 澁谷雄 京都府綴喜郡田辺町松井ケ丘4丁目8番地13

<71>出願人 株式会社 横井製作所 大阪府寝屋川市石津東町31番1号

<74>代理人 弁理士 石原勝

審判の合議体 審判長 山口金弥 審判官 大里一幸 審判官 主代静義

<56>参考文献 実開 昭52-74698(JP、U) 実開 昭55-19692(JP、U)

実公 昭27-4697(JP、Y1)

<57>実用新案登録請求の範囲

格納箱の一側部側に配した支持部材によつて水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、リールの消火ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホースで構成したことを特徴とする消火栓装置。

考案の詳細な説明

本考案は主として屋内外に設置される消火栓装置に関する。

従来一般の消火栓装置においては、ボリエステル糸、ビニロン糸等を素材とする布地の裏面にゴムを接着した消火ホースを使用し、その先端にノズルを取着すると共にその基端部を消火栓の吐出部に直接接続している。そして消火ホースを消火栓格納箱にコシパクトに収納するために、多数の櫛杆を備えたホース架けにホースを折り曲げながら掛吊したり、中央部で折返し二つ折状に扁平に折畳んだホースをリールに捲付けたりしている。

従来一般の装置は上記の如く構成されるので、消火ホースをホース架け又はリールより完全に取外し放水態勢を整えた上でないと、消火栓のバルブを開くことができなかつた。もし消火ホースをホース架けに掛吊した状態やリールに捲付けた状態でバルブを開くと、ホース内の水路が扁平となり塞がれているため、放水が不可能である上に水圧により装置の破損事故を招くという問題があつた。

従つて、従来一般の装置によれば、消火ホースを操作する者と、消火栓のバルブを開く者の少くとも2人の人間が消火活動に必要であり、火災発見者1人による迅速な初期消火活動が困難であるという欠点があつた。又従来一般の装置によれば、消火ホースをホース架けやリールから完全に取外した状態でなければ放水できないため、放水までのタイムラグが生じると共に、約30mあ火ホースが消火栓格納箱周辺に放置されることになり、消火活動の支障となるという欠点があつた。

本考案は上記従来例の諸欠点のすべてを是正すると共にコンパクトにリールを格納でき構造も簡単な消火栓装置を提供することを目的とする。

以下本考案を図面に示す実施例に基き具体的に説明する。格納箱1内にはリール2、リール支持装置3、消火栓4、消火ホース5などを所定位置に配設し、その前面には扉6を設けている。前記リール支持装置3は、格納箱1の内周側壁に固定した支持軸7、この支持軸7に水平方向の首振りが可能となるように枢支される略コ字状の第1枠体8、この第1枠体8の先端部で水平方向の首振りが可能となるように枢支される矩形状の第2伜体9とから成る。第2枠体9の左右枠の中間高さ位置においてリール2の中心に向け突設したリール支持部10a、10bには相嵌合する1対の管体11a、11bより成る導水管11が軸支される(第3図)。消火栓側の第1管体11aは前記リール支持部10aにナツト12を用いて固定し、消火ホース側の第2管体11bは前記リール支持部10bに回転自在に軸支される。第2管体11bはL字状に屈曲、その先端部13はリール2の遠心方向、すなわちリール2の消火ホース捲付部14に向け延び、更に最先端において直角に方向を変えてリール2の接線方向に開口する。この第2管体11bは連結部材15を介してリール2に固定し、第2管体11bとリール2とが一体に回転するように構成する。前記第1管体11aはリール2の中心軸と一致するように配設し、この先端部16に第2管体11bの基部17を水密状態に套嵌し、且つ第1管体11aと第2管体11b間に軸受18を介在させ、リール2がその中心軸の回りに自在に回転するように構成する。

前記第1管体11aの基部、すなわち導水管11の流入部19と消火栓4の吐出部20とはフレキシブルな導水ホース21で連通する。この導水ホース21としては従来一般に使用される可撓ホースを使用すればよいが、本考案の消火ホースと同様楼のホースを使用することも可能である。

前記第2管体11bの最先部、すなわち導水管11の吐出部22には、消火ホース5の基端部23を接続する。この消火ホース5は従来の消火ホースとは異なり、保形性を具備したホースである。硬質合成樹脂で成形されたスパイラル状の芯線24の外周に、ポリエステル糸、ビニロン糸等を素材とする布地25を捲着し、且つこの布地25の表面に耐摩耗性合成樹脂26をコーティングこする一方、前記芯線24の内周にゴム27を接着して成る。従つてこの消火ホース5は従来のものと同様軽量で取り扱いが容易であると共に、スパイラル状の芯線24により、常に断面形状を略円形状に保ち、リール2に捲き付けた際にも、水路を開いた状態に維持する。

尚、図中28、28はリール2の主構成部材たる左右一対の円盤体、29、29…は左右の円盤体28、28を所定形状に保持する長ボルトで、この長ボルト29、29…の周囲に消火ホース5を捲き付ける。又30は消火ホース5の先端に取着したノズル、31は消火栓4のバルブを操作するためのハンドルである。

上記実施例においては、リール支持部材(第2枠体がこれに該当する。)9が、支持軸7及び第1枠体8からなる支持部材によつて水平方向の首振りが可能なように枢支されている。そして、支持軸7を中心とする首振りと、第1枠体8の先端側部分を中心とする首振りの2段の首振りが可能なように構成されているが、本考案はこれに限定されず前記首振りが一段の場合をも含む。又上記実施例では、リール2の中心水平軸が第1管体1aの中心と一致しているが本考案では、これ限定されない。又リール2の中心水平軸が第1図に示すようにリール2の格納時に格納箱1の略中央に位置することが必要であるが、「略中央」という意味はリール2を奥行きが小のコンパクトな格納箱1内に効率良く格納しうる観点から解釈されねばならない。

本考案の消火栓装置は、上記説明のように、格納箱の一側部側に配した支持部材によつて水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材に、中心水平軸が格納時に格納箱の略中央に位置するリールを回転可能に支持し、このリールの中心部に配設した導水管の流入部と消火栓の吐出部とをフレキシブルな導水ホースで連通する一方、リールの導水ホース捲付部に向け開口する前記導水管の吐出部に消火ホースの基端部を接続し、且つ前記消火ホースを保形性を具備するホすで構成したことを特徴とするので、次のような長所を有する。

<1> 保形性を具備する消火ホース5を使用し、かつリール2の中心部に配設した導水管11の吐出部22に、消火ホース5の基端部23を接続しているので、消火ホース5を2つ折状に折畳む必要はなく、又リール2に捲き付けた状態においても消火ホース5の内部に形成される水路は断面略円形で常に開いている。従つて、火災発見者は消火栓4のバルブをBAいた後、消火ホース5をリール2より繰り出しっっ、ノズル30を所望の位置まで持ち運び、放水することができ、単独で迅速な初期消火活動をなすことができる。勿論、バルブを開いた直後より放水が開始され、必要としない場所にまで放水する結果となるが、このような短所は、上記長所に比較すれば微細なものである。

<2> 消火ホース5はリール2に捲付けられているが、その捲付けの長さ如何にかかわらず、常に水路は開いている。従つて消火活動に当たつては、必要な長さだけの消火ホース5をリール2より繰出せばよく、極めて迅速に所望の箇所に放水することができる。又格納箱1の周辺に余分な消火ホース5が放置されないので、消火活動をスムーズになすことができる。

<3> 格納箱1の一側部側に配した支持部材7、8によつて水平方向の首振りが可能なように枢支されたリール支持部材9に、中心水平軸が格納時に格納箱1の略中央に位置するリール2を回転可能に支持しているので、格納箱1の内部空間を有効に利用してリール2を格納でき、又リール2を前方に水平回動させて使用状態とするときも、前記支持部材7、8が格納箱1の一側部側に配されているので、奥行きを小とした格納箱1であつても、これとリール2との干渉か防がれる結果、コンパクトにリール2を格納てきる消火栓装置を提供できる。

<4><3>で述べた長所を有するにもかかわらず、構造を簡単なものとすることができる。すなわち、前記リール2の中心部に配設した導水管11の流入部19と消火栓4の吐出部20とをフレキシブルな導水ホース21で連通しているので、リール2の首振りが自在となるにもかかわらず、シール等の必要のない簡単な構造のものとすることができる。

図面の簡単な説明

図面は本考案の実施例を示し、第1図はその正面図、第2図は第1図の主要部のみを示した右面図、第3図は主要部の拡大縦断左側面図、第4図は消火ホースの一部縦断側面図である。

1……格納箱、2……リール、4……消火栓、5……消火ホース、7……支持軸、8……第1枠体、 9……第2枠体、11……導水管、21……導水ホース、22……吐出部、23……基端部。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第一物件目録

別紙物件説明書及び別紙図面に示す左記の消火栓装置

一 露出・右開き型消火栓装置(イ号物件、第1図・第2図)

二 露出・左開き型消火栓装置(ロ号物件、第3図)

三 露出・格納空間付消火栓装置(ハ号物件、第4図)

四 埋込・右開き型消火栓装置(ニ号物件、第5図・第6図)

五 埋込・左開き型消火栓装置(ホ号物件、第7図)

六 埋込・格納空間付消火栓装置(ヘ号物件、第8図)

七 埋込・両側格納空間付消火栓装置(ト号物件・第9図)

物件説明書

一 別紙図面の説明

第1図は、露出・右開き型消火栓装置(イ号物件)の扉を取り外した状態の正面図である。

第2図は、第1図の矢印イーイ視図であって、前方に見えるリール支持部材3b及び支持部材3aの一部を形成する蝶番の支持軸3cを省略したものである。

第3図は、露出・左開き型消火栓装置(ロ号物件)の扉を取り外した状態の正面図である。

第4図は、露出・格納空間付消火栓装置(ハ号物件)の扉を取り外した状態の正面図である。

第5図は、埋込・右開き型消火栓装置(ニ号物件)の扉を取り外した状態を示す正面図である。

第6図は、第5図の矢印イーイ視図であって、前方に見えるリール支持部材3b及び支持部材3aの一部を形成する蝶番の支持軸3cを省略したものである。

第7図は、埋込・左開き型消火栓装置(ホ号物件)の扉を取り外した状態を示す正面図である。

第8図は埋込・格納空間付消火栓装置(ヘ号物件)の扉を取り外した状態の正面図である。

第9図は埋込・両側格納空間付消火栓装置(ト号物件)の扉を取り外した状態の正面図である。

第10図は、イ号物件の格納箱1の部分を省略した中央縦断面図であり、要部の具体的構造を明確にするため、格納箱1の部分は省略されている。

第11図は、リール2を回転可能に支持する部分の中央縦断面の拡大図である。

第12図は、リール支持部材3bの基端部を格納箱の右側板へ溶接により固定するようにした消火栓装置の扉を取り外した状態の中央横断面図である。

第13図は、リール支持部材3bの基端部を格納箱の右側板ヘボルト・ナット16により固定するようにした消火栓装置の扉を取り外した状態の中央横断面図である。

第14図は、第13図の消火栓装置において、リール2を格納箱1の外方へ首振りさせた状態を仮想線でもって示したものである。

二 符号の説明

第1図面ないし第11図において、1は格納箱、2はリール、2aは消火ホース捲付部、3aは支持部材、3・は支持部材を形成する支持台、3cは蝶番の支持軸、3dは支持板、3bはリール支持部材、4は消火ホース、4aは消火栓ホースの基端部、5は導水管、5aは流入側、5bは吐出側、5cは入口側導水管、5dは吐出側導水管、6は導水ホース、7は消火栓、7aは吐出部、8は収納空間、9は放水ノズル、10はポンプ起動押釦、11は警報関係機器取付部、12はディスクブレーキ、12aはディスク、12bはブレーキリング、12cは制動面、13、14はボルト、15はパッキン、16はボルトである。

三 構成

a 格納箱1の内部の右側板又は左側板に支持部材3aが取り付けられており、この支持部材3aにリール支持部材3bの基端部が、水平方向に首振りが可能なように枢支されている。

b 前記リール支持部材3bの先端には、リール2が回転可能に支持されており、かつ、リール2を格納箱1内へ収納した状態では、前記リール2の中心水平軸は格納箱1のほぼ中央に位置している。

c 前記リール2の消火ホース捲付部2aには、消火ホースが捲付け収納され、リール2の中心部には導水管5が設けられており、当該導水管5の流入側5aは、フレキシブルな導水ホース6によって、格納箱1内に設けた消火栓7の吐出部7aへ接続されている。

d 更に、前記導水管5の吐出側5bは、リール2の消火ホース捲付部2aへ向けて開口されており、この吐出側5bへ、リール2に捲付け収納した消火ホース4の基端部4aが接続されている。

e 消火ホース4は保形性を備えたホースである。

f 前記格納箱1には、第1図ないし第4図に示す露出型と、第5図ないし第9図に示す埋込型のものがあり、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に使用する型式が選定される。

また、格納箱1には、第4図、第8図及び第9図等のように、他の物品(例えば消火器等)を格納するための収納空間8を別に設けた型式のものがあり、必要に応じて適宜に選定される。

更に、格納箱1には、扉が左付けのものと右付けのものがあり、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に選定される。

前記リール支持部材3bは、前述の如く格納箱1の内部の左側板又は右側板に固定した支持部材3aへ溶接又はポルト・ナット16のいずれかによって取り付けられており、正面視において左側板へ取り付けたものを左開き型と呼称し、右側板へ取り付けたものを右開き型と呼称している。

なお、右開き型にするか左開き型にするかは、消火栓装置の設置場所に応じて適宜に選定される。

g 前記導水管5は、入口側導水管5cの末端部内方へ吐出側導水管5dの先端部を差し込み、両者を回転可能にかつパッキン15を介設して水密状に連結したものである。

また、前記吐出側導水管5dの中間部には、ホースリール2の側板2bがボルト13により固定されている。

更に、前記入口側導水管5cの先端部側には、リール支持部材3bがボルト14により固定されている。

h すなわち、リール2は、リール支持部材3bの先端へ導水管5を介して回転可能に支持されており、リール2が回転することにより、導水管5の入口側導水管5c内へ挿入した吐出側導水管5dが回転することになる。

また、リール2の「中心水平軸」は、第11図に示した前記導水管5の長手方向の中心軸線φと一致しており、第1図ないし第9図における図番5の引出し線の先端位置が、前記「中心水平軸」に相当する位置である。

更に、導水管5を形成する吐出側導水管5dの先端部は、第1図及び第10図等からも明らかなように、ホースリール2のホース巻付部2aへ向けて開口されている。

四 イ号物件ないしト号物件の区分

(一) イ号物件

格納箱1が露出型で、かつリール2が右開き状に取り付けられているものをいう。

(二) ロ号物件

格納箱1が露出型で、かつリール2が左開き状に取り付けられているものをいう。

(三) ハ号物件

格納箱1が露出型の格納空間付きでありかつリール2が右開き又は左開き状に取り付けられているものをいう。

(四) ニ号物件

格納箱1が埋込型で、かつリール2が右開き状に取り付けられているものをいう。

(五) ホ号物件

格納箱1が埋込型で、かつリール2が左開き状に取り付けられているものをいう。

(六) ヘ号物件

格納箱1が埋込型の格納空間付きであり、かつリール2が右開き又は左開き状に取り付けられているものをいう。

(七) ト号物件

格納箱1が埋込型の両側格納空間付きであり、かつリール2が右開き又は左開き状に取り付けられているものをいう。

五 作動

(一) 消火栓装置により消火を行う場合には、格納箱1の扉を開放し、放水ノズル9を持ち、消火栓7を開放する。その後、ノズル9及びホース4を引き出し、火点へ向けて放水をする。

(二) ノズル9及びホース4が引き出されると、リール2はリール支持部材3bを介して水平方向に自由に首を振り、ホース4の引き出し方向へ向く。これにより、円滑にホース4が引き出される。

(三) また、消火栓ポンプが起動されていない場合には、ポンプ起動押釦10が操作され、更に、必要に応じて、警報関係機器(発信機等)が作動される。

(四) 使用後には、リール2を格納箱1の外部へ移動させた状態で、その消火ホース捲付部2aヘホース4を巻取り収納する。その後、リール2を格納箱1の内部へ移動させ、格納箱1のほぼ中央部に位置せしめた状態で扉を閉鎖する。

第1図

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第2図

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第3図

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第4図

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第5図

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第6図

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第7図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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第13図

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第14図

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第二物件目録

第一物件目録の一部について、左記のとおり改める外は、第一物件目録と同じ。

一 別紙図面の説明

第2図及び第6図の説明中の「支持部材3a」を「その取付け用固定部材30a」とする。

二 符号の説明

第1、第3ないし第5、第7ないし第9図中に付された符号「3a」を「30a」に改めたうえ、「3aは支持部材、3・は支持部材を形成する支持台」を「30aはリール支持部材3bの取付け用固定部材」に改める。

第12及び第13図については、末尾添付のとおり、図中に付された符号「3a」及び「3・」を「30a」に改めるとともに、第13図中に、新たに「30A」「30B」「30」「60」「70」「3・」の符号を付したうえ、符号の説明として「30Aはリール支持部材取付け用固定部材の正面部、30Bは同側面部、30は中央横断面L字状の連結片、60は蝶番片、70は蝶番である。」を加える。

三 構成

構成aを、

「a 格納箱1の内部の右側板又は左側板の格納箱1の開口寄りにリール支持部材3bの取付け用固定部材30aが固着され、

右取付け用固定部材30aに正面部30Aと側面部30Bとを備えた中央横断面L字状の連結片30がその正面部30Aを格納箱1の開口側に位置させて連結されているとともに、先端部背面にリール2を回転自在に片持ち支持してなるリール支持部材3bの基部3・と、前記連結片30の正面部30Aとが、横断面L字状の一対の蝶番片60・60と軸3cとからなる蝶番70の前記蝶番片60・60とそれぞれ連結され、」

に改め、

構成bを、

「b 右蝶番70の軸3cをリール2の中心φから該リール2の半径Rに略等しい位置における格納箱1の開口部近くに配設して、リール2を格納箱1の開口部から水平方向に回動可能に構成し、」

に改める。

第12図

<省略>

第13図

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実用新案公報

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